聴く習慣(4)「否定しない」の落とし穴②

こんにちは。
心理カウンセラー&カラーセラピストの細淵です。


さて、前回の続きです。

聴くポイントで挙がる<否定しない>について。
これを<否定しない=肯定する>だと解釈する。

実は、ここに落とし穴があるという話です。

無理なく肯定できるときには、それでもいい。
でも、肯定できるときばかりではないはず。

では、<否定しない>とは
どういう意味なのか?



それは、
<否定も、そして肯定もしない>
となります。

今回は、対立せず、苦しまずに聴くための
ポイントを掘り下げます。


▼前回の記事はこちらから読めます。
「否定」と「肯定」の前提を語っています。
http://in-studium2015.blogspot.jp/2017/09/4.html


「肯定」するのも、ときには苦しい

では、さっそく例を挙げて見てみましょう。

「こないださぁ、会社の会議があったんだけど、
 面倒だから後輩に任せてサボったんだよね。
 だって、行っても意味ないし、時間の無駄だから!」

こんなふうに言ってきた人がいるとします。
あなたは、どのように答えるでしょうか?

まずは、次の3パターンを見てみましょう。
  1. 「なんて無責任なの!押し付けられた人の身にもなってよね!」
  2. 「面倒なことでもやるのが社会人として当然でしょ!」
  3. 「だよね~!会議ってホント無駄だし、行く意味ないよね~」
ちょっと極端かもですが・・・
①②は「否定」で、③は「肯定」になっていますね。


さて、「否定しない」・・・と思うと、
回答の選択肢は③しかなくなります。

あなたが話し手と同じような価値観で、
<会議なんて意味ない!サボっちゃえ!>
という考えなら
③のように答えるのは容易いかもしれません。


しかし、

  • 仕事はどんなことでも責任を持って全うすべき
  • 他人に迷惑をかけてはいけない

あなたがこのような価値観を
持っているとしたら、
③の回答なんてとんでもない!ですよね。


とっさに、①や②のような言葉が
出てくるかもしれません。

もし、無理をして
③のように返したところで、
気分は悪くなるばかり。

本心と違うので
どんどん苦しくなってしまいます。



何がなんでも肯定しなければと思うと、
ときに、自分自身を
否定することになってしまいます。

相手との関係をよりよくしようと
聴くことを実践しているあなたに、
そんな思いはしてほしくないのです。

否定と肯定の前の「こころの余白」を持つ

では、どう対応すればいいのか?

そこで出てくるのが、冒頭の
<否定も、そして肯定もしない>
ということ。

言い換えると、
相手の言い分を<そのまま受け止める>

聴き方でもよくお伝えしているので
お気づきの方もいらっしゃったかもしれません。


今回の例で言えば、
こんな返し方ができるかもしれません。

「こないだの会議サボったんだ~。
 意味ないな、無駄だなって思うと面倒になっちゃうよね」

言い回しは、
相手や状況に合わせて変わると思います。

場合によっては、言葉は最小限に止めて
受け止める人もいるかもしれません。

「ふ~ん、会議、面倒でサボったのね~」



いずれにしても、
「善いか悪いか」「肯定か否定か」の前に、
受け止めるための<こころの余白>
イメージして作ってみます。

自分の価値観で相手を裁かないのが「聴く」

前回の記事でも書きましたが、
「肯定」や「否定」は、
自分の価値観から生まれます。

相手の話をききながら、
自分の価値観と照らし合わせて、
「善い」か「悪い」か
判断を下しているということ。

「善い」なら肯定に、
「悪い」なら否定になります。

つまり、肯定も否定も
相手を「ジャッジ」する行為なのです。


日常会話において、
無理なく、自然に肯定できるのなら、
それはそれでいいと思っています。

価値観の合う人同士の会話って
とても心地がよくて、楽しいものです。


ですが、冒頭の通り、
肯定できることばかりではないのも事実。

聴いていて、自分が苦しくなったとき、
どうしても相手を否定したくなったとき、
このことを思い出してください。

「自分の価値観で相手を裁こうとしていないか?」

そして、判決モードから、
受け止めモードに切り替えるんです。


善悪を判断すること、
モラルやルールに則った判断をすること、
それらは悪いことではありません。

ときには、それを伝えること、
教えることも必要です。

ただ、「聴くこと」の目的は、
相手の言動に対して
判決を下すことではありません。

相手への理解を深め、
気持ちを共有すること。
そのように「聴くこと」で会話の質を上げ、
そして、関係の質もよりよくすること。

これが、「聴くこと」の目的です。




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今回の<「否定しない」の落とし穴>は、
「肯定しなくちゃ!」と「でも、苦しい…」の狭間で
葛藤している人たちの気持ちが
少しでもラクになれば…と思って書きました。

まずは、意識してみることから始めてみてくださいね。
充実した傾聴ライフを~(^^)/