聴く習慣(5)傾聴で正義のヒーローが歓迎されない理由

こんにちは。
心理カウンセラー&カラーセラピストの細淵です。


会話をしていて、
こんなことありませんか?

アドバイスをしてあげたのに
相手が不機嫌になってしまった。

正しいことを言っているのに
なぜか相手が怒り出した。


会話には
解決してあげようとしたり、
正しいことが裏目に出てしまう、
そんなときもあるんです。

会話で「正しい人」になりすぎていませんか?

先日、あるお店で、
お母さんとその息子さんが
会話をしていました。

立派な社会人として
バリバリ働いている感じの息子さん。
長い年月と豊かな経験を背負って
少し背中が丸くなってきたお母さん。

そんなお二人でした。


始めは何か世間話をしていたようですが、
次第に二人とも声が大きくなっていきます。

お母さんのほうが
<対応に困る人>について話していると、
それに対して息子さんは、

「それは、○○すべきなんだ」
「こうすればよくなるはずだ」

と、良識の観点からこうあるべき、
あるいは
○○すれば必ず良い方向にいくと
力強く語っていました。

すると、お母さんは
「そんなのきれいごとだよ」
「そうやって言われるとやる気なくなるよ」
と、次第に不機嫌に。

その様子を見た息子さんも、
「そんなんじゃダメだ!」と
さらに言葉に力が入ります。

しかし、お母さんは
どんどん頑なになってしまいます。

お互いの苛立った声はどんどん大きくなり、
対立も深まるばかりでした・・・。

(※実際のシーンとは設定を変えています)

「正義」が「悪」を生む!?

こんな経験をお持ちの方も多いかもしれません。
私も身に覚えがたくさんあります(^_^;)

これは、どちらかが「正しい人」、
つまり「正義のヒーロー」になってしまうと
起こりやすいのです。


突然ですが、「正義のヒーロー」は
なぜ存在できるのでしょうか?


それは、「悪役」がいるからです。

奇妙な話ですが、事実です。
もしすべての人がどんなときも正しいなら、
「正義のヒーロー」なんて成立しません。

「正義のヒーロー」になれるのは
「悪役」を演じてくれる人がいるから。

・・・念のために言っておきますが、私は
悪役の肩を持っているわけではありません(笑)



何が言いたいかというと・・・

どちらかが正義のヒーローになるためには、
もうひとりには、
悪役になってもらう必要があるということ。


今回の息子さんの言葉は
どれも「正しいこと」ばかりでした。

息子さんは正義のヒーローだったわけです。
すると、お母さんは悪役になってしまいます。

息子さんは何とかして
お母さんの言うことを変えさせようとします。
ところが、お母さんは防御態勢に。
どんどん心を閉ざし、身を守ろうとします。

もはやこれは「戦い」。

お互いに負けまいと
心はどんどん固くなってしまいます・・・。

「正義のヒーロー」、休暇のすすめ


正義のヒーローであるためには
悪役を必要とします。

まるで、パパと子どもが
ヒーローごっこをするみたいに。

ヒーローごっこのように、意図して
悪役を引き受けるぶんにはいいのですが、
会話では突然起こります。


聴き手が「それは○○でしょ」と
正しい立場で会話に参加してしまうと、
話し手は居心地悪く感じてしまいます。

とくに、話し手が
アドバイスや正解を求めていないときに
これは起こりやすくなります。

対立する立場では分かり合えません。
お互いにイライラを抱えやすくなるのです。

これが、傾聴(聴く会話)において
正義のヒーローが歓迎されない理由。


たとえば、あなたが
「今日仕事行きたくないな…休んじゃおうかな」
と言ったとします。

あなたの心がより柔らかくなるのは
次の①②のどちらでしょうか?

①「今日大事な会議があるって言ったじゃない!
  迷惑かかるし、ずる休みなんてダメよ!」
②「そっか、仕事行きたくないんだね…」


ほとんどの人は②の方が
心が柔らかくなると感じるのではないでしょうか。

①は確かに正しいことを言っています。
だけど、何だか責められて
心がさらに固くなってしまう気がしませんか?

「なによ、私の気も知らないで…。
 そんなことは分かってるわよ!」

相手はこんなふうに感じて、
心を閉ざしてしまうかも知れませんよね・・・。

正義と悪の会話ではなく、仲間の同士会話をしよう

今回のお母さんも息子さんも、
本当はお互いを大切に思っているはずです。

息子さんは、お母さんを助けてあげたかった。
お母さんは、息子さんに
やり場のない気持ちを分かってほしかった。


ルールを守ることや正しく在ること。
正義感溢れる言動も、素敵だと思います。

だけど、聴く会話のときには
少しお休みすることをオススメします。
悲しい戦いをしなくて済むから。


聴く会話とは、
相手の気持ちを理解して、共有すること。

やっつけるのではなく、受け止める。
そして、手をつなぐんです。

言い換えれば、
正義のヒーローと悪役の会話ではなく、
同じ思いを共有する仲間同士の会話です。


聴く会話は、凝り固まった心をほぐし、
安心感という潤いを与えることができます。

家族や親しい間柄だからこそ
心の安全を守り、栄養を与える聴く会話を
時々してみてはいかがでしょう。