見た目もそうですし、考え方、思い、認識の違いなど…。同じことよりも、違うことばかりですよね。そんな違いだらけでも、何か共通点があったりするとそれをきっかけに仲良くなれることも多いものです。
そんなふうにしてお互いの距離が近づくと、この「違いがある」という当たり前のことが、見えなくなることもあるのではないでしょうか。
このエピソードについてどう感じますか?
先日、電車に載っていた時のこと。その電車は、通過電車を待っていたので、ドアを開けたまましばらく停車していました。すると、小さな蛾が車内に入り込んでしまったのです。私は席に座っていて、入り込んできた蛾を目で追っていました。
私の正面の席にもいくつか空席があり、その空いている席の頭上、網棚付近に蛾が止まりました。
ほどなくして、1人の男性が空席の前までやって来ました。例の蛾が止まっている席です。
ところが、その男性は席には座らず、止まっている蛾に手を伸ばしてそっと包み込んだのです。
男性は蛾を手に包み込んだまま、今度はドアの方へ移動します。そして車外で手を開き、蛾を外へ逃がしたのでした。
その後、男性は自分の荷物を置いていた別の席へ戻り、何事もなかったかのようにその電車は動き出しました――。
自分がどう感じるか味わってみる
さて、あなたは上記のエピソードを読んでみて、どう感じたでしょうか?- なんて優しい男性なんだろう!
- すごいなぁ。周りの人が困るからやったんだろうなぁ
- 素手で蛾を掴むなんて有り得ない!
- 何であんなことしたんだろう?放っておけばいいのに…
- 変わった人だな。蛾が好きなのかな?
このほかにも、もっと感じることはあると思います。あなたはいかがでしたでしょうか。また、周りの人はどのように感じるでしょうか。聞いてみても面白いかも知れませんね。
きっと、感じ方・捉え方は人それぞれという結果になります。
このようなエピソード1つとっても、そこには千差万別の感じ方、捉え方があります。自分と同じような答えでも、その理由や背景などには違いがある場合も多いのです。
それを深堀りしていけば、その人の価値観や信念にたどり着くこともあるかも知れません。
「正解」は人それぞれでいい
私たちが生きていくうえで、「正解」があるテーマというものは、それほど多くないのではないでしょうか。特に人生に関わる問題や悩みには、万人に共通するような「正解」はありません。ある人は、Aという選択肢が正解だと言い、またある人はBという選択肢が正解だと言う…。そんな問題や悩みは、自分の人生を振り返るだけでも沢山出てくるはずです。
今回ご紹介したエピソードにも、「正解」はありません。いや、「正解がない」というのが正解と言えるかも知れませんね。
大切なのは、どんな感じ方をしたかということではありません。そのようなお互いの違いを知り、共有し合うことではないでしょうか。
正しい感じ方なんてない。
もしあったとして、「正解はその感じ方じゃないよ」と言われて、自分の中に湧き上がったものをなかったことにできるでしょうか。あるいは、「そうじゃない、こう感じるのが正解なんだよ」と言って、相手をコントロールすることができるでしょうか。
私はできないと思っています。だから、どう感じるかに正解や間違いはないんです。
お互いの価値観に触れてみる
以前、こんなことがありました。自分がすごく感動したワンシーンについて、それを友人にも伝えたくて一生懸命話したところ、「なにそれ~!笑える~~!!」と爆笑されてしまいました…(^^;)
私は、そのワンシーンを「感動的で心温まるシーン」と捉えていましたが、彼女は「面白くて笑えるシーン」と捉え、私とは全く違う反応を示したのです。
その彼女のリアクションが、私が期待していたものとはあまりにもかけ離れていて、ショックを受けました。自分が大切にしていた価値観を馬鹿にされたような、理解してもらえるという気持ちを裏切られたような…。そんな感情が入り混じって、イラッとしたのを覚えています。
改めていま思い返しても、そんな些細なことでも違いがあるんだなと痛感します。
その当時、やっぱり私もこのままでは気持ちの収まりどころがないということで、その彼女に率直に自分の気持ちを伝えました。
「え~、笑えるかな~?私はいいな~って感じて、結構感動したんだけどなぁ…」
すると彼女は、
「あ、そうなんだ?ごめんごめん。私はここの部分が面白いなっていう印象が強かったから、思わず笑っちゃったんだけど…。確かに、さやかの言うこともそうだよね~」
という反応を返してくれました。
もちろん、爆笑した彼女に悪気はありません。
単純に、お互いにまず最初にどこにフォーカスしたか、そしてそのシーンから何を一番強く受け取ったか、ただそれだけの違いでした。
どっちが正しいわけではないと知っていることで、お互いに感じたことをシェアするよい機会が生まれます。それは、「そんな捉え方もあるのね」と自分の視点を増やしてくれるメリットもあるのです。
そして同時に、相手とのちょうどよい距離感を保つことにもつながるのではないでしょうか。
「絶対自分と同じ考えじゃなきゃだめ」ということに縛られてしまうと、苦しくなるのは自分ですし、そんな苦しみながら付き合うということにメリットを感じられなくなると、お互いに離れてしまいます。
それって、悲しいことだと思いませんか?
すべての人とそのようにシェアし合える関係を築きなさいということではなく、自分が特に大切にしている関係――家族、パートナー、友人、仲間…これから先もずっと関係を築いていきたいと思う人との間では、意識してみても良いかも知れません。
*Written by S.H